Sendai Ikuei Gakuen since 1905 100th Anniversary
 
新たな一歩のために

秀光中等教育学校 仙台育英学園高等学校

校 長 加 藤 雄 彦
 
 定禅寺通りの欅の葉が鮮やかに輝き、緑の回廊は過去と現在と未来をつなぐ「タイムトンネル」のように人々を悠久の時の流れの中に誘ってくれます。このようなロマンティックスポットが1945年7月10日未明の仙台空襲による市街地焼失後の戦後復興事業として整備され、明治期以来の「軍都仙台」が「杜の都仙台」にイメージチェンジされた場所として大きな役割を果たしたことをどれだけ多くの市民は知っているだろうかとふと思うことがあります。
 この美しき通りの東、宮城県庁東南側にある錦町公園こそ仙台育英中学校のモダンで威風堂々とした校舎が建っていたところです。そこは創立者加藤利吉先生が思い描いた近代中等教育の理想を実現するため、会津若松出身の無一文教育者が妻さよと共にゼロから築いたかけがえのない学校があったのです。
 そして、戦争が終わり、平和な時代が訪れれば、帝国海軍大佐であり利吉先生の末弟でありながら養子となった栄吉先生と力を合わせて「仙台育英」を東北の名門私学としてさらに飛躍させようと考えていた学校でもあったのです。残念なことに、戦争はこの大切な夢と命の両方を奪いました。利吉先生を絶望の淵に追込んだ出来事をこの学園を現在預かる者として、子を持つ親として痛いほどわかります。
 しかし、利吉先生が凡夫と異なるところはどんな苦境に立たされても、人並み外れた不撓不屈の精神を持っていたところであり、再起を期して決して諦めない故郷の会津魂が今日の仙台育英学園を動かし、底知れない力となって前へ前へと推し進めてくれるのです。
 今回で9回目となるニューヨーク・シンフォニック・アンサンブルとのジョイントコンサートは「ランゲージ」と「ミュージック」が世界平和と地球上の人々との友好の架け橋となるという信念から日本放送協会関係者のお計らいによって行われてきました。同アンサンブルの常任指揮者であり、最高責任者である高原守先生には秀光中等教育学校および仙台育英学園高等学校の生徒はもちろんのこと保護者そして教職員が情熱溢れるご指導を受けながら、音楽の魅力と世界レベルで活躍するエネルギーに触れる機会を与えてくださいました。心から感謝申し上げると共に、高原先生の今後のご活躍とご健勝を祈念します。
 本日のコンサートは仙台育英学園にご縁のあるみなさまへの感謝と共に、「現在」から「未来」への一歩を踏み出していくための出発式です。さらに、これまで学園の100年の基盤を築いてくださった先人への報恩と追悼をしたいと思います。数多くの尊い命が犠牲となって、平和な社会があるからこそ世界の人々と音楽を通じて「生きる喜び」と「明日への意欲」を得ることができるのではないでしょうか。

 最後に、ご参会くださったみなさまのご多幸をお祈り申し上げます。そして、みなさまには創立125周年に向けた「逆転の仙台育英」の覚悟と抱負を感じ取っていただきたいと思います。本日は生徒・保護者・同窓生そして日々の教育現場で献身的に奉職されている教職員およびご協力くださった関係者と共に「我が学園(まなびや)に栄あれ」と声高らかに歌いましょう。
 
 
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