仙台育英学園“I-Lion Day”
岡崎照子さんのお話


  仙台育英学園の皆さん、おはようございます。私は福島県会津若松市から参りました、岡崎愛の母の岡崎照子と申します。本日は、娘が『生命(いのち)のメッセージ展』のメッセンジャーとしてこちらに参りました。今日は皆さんの先輩が、5年前に交通事故に遭われた日です。この日に『生命のメッセージ展』が開催されることに大きな意義があると思っております。また、同じく子どもを失った親としてとてもありがたく思っています。

 私の娘、愛は2005年8月、中学3年の夏休みに交通事故に遭い死亡しました。愛は、中学校の部活動でなぎなたをしていました。毎日、一生懸命稽古に励んでおりました。事故に遭う9日前には、日本武道館でなぎなたの大会があり、私たち家族は精一杯戦っている愛に声援を送りました。しかし、それがまさか、なぎなたをする愛の最後の姿になるなど、思ってもみませんでした。

 皆さんの学校にもなぎなた部があり、活発に活動されていることは知っておりました。ですから、こちらで『生命のメッセージ展』の開催が決まりました時には、嬉しく、また、とても不思議な縁というものを感じました。

 5年前に亡くなられた先輩も、そして、私の娘の愛も夢をたくさん持っていました。未来を思い、毎日、それに向かって努力していました。明日も、いつものような朝が来て、いつものような一日になると思っていたはずです。家族と笑いながら食事をし、学校で友達と会話をし、勉強をして、よりよい今日にするために精一杯努力するつもりでいたはずです。そして、それは、何十年も続く未来へと繋がっていたはずです。

 しかし、ある日突然、未来は断ち切られてしまいました。そんなことがあるなど、一瞬たりとも疑うことなく、嘆くことも、叫ぶこともできず、命は奪われました。あともう少しで家に帰り着いて「ただいま」と言って見せてくれるはずだった娘の笑顔は、二度と見ることができなくなりました。

 私は、一生懸命生きていた娘が、なぜ14歳で死ななくてはならないのか、理解することができず、毎日泣き暮らしました。幸せだった家庭は暗闇となりました。子どもを失った悲しみは、時間が経っても消えることはありません。

 本日、皆さんとの対面を待っていますメッセンジャーは、皆、ある日突然、理不尽に命を奪われた人たちです。『生命のメッセージ展』につきましては、昨年、『生命のメッセージ展』代表の鈴木共子さんをモデルにした映画『0(ゼロ)からの風』をご覧になった方はご存知だと思いますが、今年度の新入生の皆さんに少し説明をさせていただきたいと思います。 

 『生命のメッセージ展』とは、犯罪・事故・いじめ・医療過誤・一気飲ませなどの結果、理不尽に命を奪われた犠牲者が主役になっていますアート展です。その主役はメッセンジャーと呼ばれる等身大の人型パネルです。胸には本人の写真とともに、訴えたいことや伝えたいことが書かれています。人型となった犠牲者たちは「命の重み」「生きていることの素晴らしさ」「生きることの意味」など多くのことを伝え、感じとってもらうため、メッセンジャーとして再び生まれ、生きているのです。『生命のメッセージ展』について、少しご理解いただけたでしょうか。

 皆さんの持っている、若い柔らかな心で、メッセンジャーたちが伝えている、伝えようとしている声、皆さんに託した思い、それらを受け取ってほしいと思っています。生きたいと願っていたメッセンジャー一人一人とゆっくり対面していただければと思っています。

 本日は、皆さんにお会いすることができまして、心からありがたく思っています。メッセンジャーたちも、中学生、高校生の若い皆さんに会えることをとても喜んでいると思います。この機会を与えていただきましたことに、メッセンジャーの母として心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。それでは、体育館でメッセンジャーと共に皆さんをお待ちしております。
 
 
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