仙台育英学園“I-Lion Day” 


岡崎照子さんのお話
 

 仙台育英学園の皆さん、おはようございます。私は福島県会津若松市から参りました、岡﨑照子と申します。
 2年前の今日、5月22日にも、このようにして、朝の校内放送でお話をさせていただきました。3年生の方で覚えていて下さる方もいらしゃるかもしれません。

 私の娘、愛は、7年前の2005年8月、中学三年生の夏休みに交通事故に遭い、死亡しました。
 本日娘は『生命のメッセージ展』のメッセンジャーとして、再び、仙台育英学園にまいりました。

 今日は皆さんの先輩が、7年前に交通事故に遭われた日です。今年も、この日に『生命のメッセージ展』が開催されますことに、大きな期待と希望を寄せております。

 昨年の3月11日、巨大地震、大津波により、一瞬にして多くの尊い命が失われました。
 皆さんの中にも、大切な人を亡くされた方が多くいらっしゃると思います。地震や津波の被害に遭われた方も多くいらっしゃると思います。一年が過ぎ、少しは落ち着かれたでしょうか。
 3月11日、福島県の相馬郡新地町に住む、私の友人も津波の犠牲になり、亡くなりました。私の娘の愛をとても可愛がってくれ、愛の事故後は、私を励まし続けてくれた大切な友人でした。どうして優しい大切な人ばかり連れていかれてしまうのだろう…と、虚しさに襲われました。

 昨年5月19日、『生命のメッセージ展』では、鈴木共子代表はじめ6名が、仙台育英学園を訪問させていただきました。震災から2ヶ月のまだ地震と津波の爪あとが色濃く残る中、皆さんの無事を喜び、励ましの気持ちを込めた、赤い手作りハートをプレゼントさせていただきました。
 命を大切にしたいという同じ思いから、仙台育英学園の皆さんと『生命のメッセージ展』がこのような繋がりを持つことができましたことを、私たちは心から嬉しく思っております。

 私の娘、愛は、中学校の部活動でなぎなたをしていました。毎日、一生懸命稽古に励んでいました。事故に遭う9日前には、東京の日本武道館でなぎなたの大会があり、精一杯戦う姿を見せてくれました。その時の試合の様子を撮ったビデオの映像が、愛の姿を留める最後のものになってしまいました。
 皆さんの学校で活躍されています、なぎなた部には、かつて愛と一緒に稽古して下さった人、また指導をして下さった方もいらっしゃいます。これも本当に不思議な縁で結ばれているのだと、改めて感じています。

 このところ、悲惨な交通事故、交通事件が続いています。またも、多くの命が一瞬にして奪われました。
 皆さんの先輩方も、ある日突然、飲酒運転の暴走車に命を奪われました。
 私の娘も、夏の日、友達と図書館へ向かい、『行って来ます』と出かけたまま、元気な姿で帰ってくることは二度とありませんでした。どうして、こんなことがあるのでしょうか。
 生まれてきてくれたことを喜び、大切に育て、それに応えるように、一生懸命生きていた娘が、どうしてたった14歳で死ななくてはならないのでしょうか。
 皆さんの先輩方も、お母さん、お父さん、兄弟、周りの多くの人から愛され、大切に育てられていたはずです。人の命は、何より重く何にも代えられないはずです。
 しかし、現実は違っていることを、娘を亡くして初めて思い知らされました。命はあまりにも軽く、その扱いに打ちのめされるばかりでした。

 私たちは、みんな愛されて生まれてきました。私たちが誕生するまでにある道のりは、偶然と奇跡が何度も積み重なり、そして、やっとこの世に人間として誕生するのだそうです。ですから、私たちが今ここにいることも、当たり前ではなく、奇跡なのです。
 生きていることは素晴しく、生きているだけで価値があることなのです。生きてさえいれば、命さえあれば何でも出来ます。
 皆さんの先輩方も、将来にたくさんの夢を描き、勉強に部活動に、努力していました。その何十年も先まで続く未来を一瞬にして、絶たれてしまったのです。

 私の娘、愛は、人の役に立ちたいという夢を持っていました。将来は、国連やユニセフで働いて、苦しんでいる人を助けたいと考えていました。しかし、その夢を叶えることは出来ませんでした。どれほど悔しく、無念だったでしょう。生きていれば、やがて結婚もして、子どもも生んだことでしょう。命は繋がっていくはずでした。

 本日、グローリーホールで皆さんとの対面を待っていますメッセンジャーは、皆、ある日突然、理不尽に命を奪われた人たちです。『生命のメッセージ展』につきましては、二年前に対面をして、既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、今回が初めての方たちが多くいらっしゃいますので、少し説明をさせていただきたいと思います。 

 『生命のメッセージ展』とは、犯罪・事故・いじめ・医療過誤・一気飲ませなどの結果、理不尽に命を奪われた犠牲者が主役になっていますアート展です。その主役はメッセンジャーと呼ばれる等身大の人の形をした白いパネルです。胸には本人の写真とともに、訴えたいことや伝えたいことが書かれています。足元には生前に履いていた靴が置かれています。人型となった犠牲者たちは「命の重み」「生きていることの素晴しさ」「生きることの意味」など多くのことを伝え、感じとってもらうため、メッセンジャーとして再び誕生しました。そして、命のことを多くの人に伝え、その思いが未来に繋がるよう、全国を巡り、新しい命を生きているのです。『生命のメッセージ展』について、少しご理解いただけたでしょうか。

 皆さんは、昨年の震災で、もう既に命の大切さを誰よりも強く実感していることと思います。そんな皆さんだからこそ、未来を絶たれた人たちの声を受け止めていただけると、思っています。皆さんの感受性豊かな柔らかい心で、メッセンジャーたちが伝えようとしている声、皆さんに託したい思い、それらを受け取ってほしいと思っています。生きたいと願っていたメッセンジャー一人一人とゆっくり対面していただければと思っています。

 本日は、皆さんにお会いすることができまして、心からありがたく思っています。メッセンジャーたちも、中学生、高校生の若い皆さんに、また会えることをとても喜んでいるはずです。再びこの機会を与えていただきましたことに、メッセンジャーの母として心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。それでは、グローリーホールでメッセンジャーと共に皆さんをお待ちしております。


 
 
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