生徒代表のことば(生徒会長)
 
「生徒代表のことば」
 
 昨年の5月22日、気象的には五月晴れだった、と思うのですが、私たち仙台育英生の胸のうちは、重く暗い雲が立ち込めたままの、一日だったと記憶しています。

人間の生命は誰人によっても冒すことのできない、冒されてならない、尊いものであると思います。あの日、それが無残な形で葬り去られた時、私たちは茫然とし、成すすべもなく、無力さを痛感したのみでした。

 ただ、その時残されたご家族の悲しみに接し、亡くなられた仲間たちの無念さを思い、むしょうに心の中から、突き上げて来るものがありました。

 そこで生徒会では、「自分たちに今、何かできることがないのか」「このことでむなしく手をこまねいていて良いのか」という点で話し合いを重ね、飲酒運転根絶署名運動を起こし、県民に広く訴えることになったのでした。

 署名活動は、各方面への熱意ある働きかけや、地道な街頭での活動によって関心が高まり、大方のご理解とご協力をいただくことができました。その結果、十八万人を超える貴重な署名が集まりました。署名簿は、さっそく、県警本部へもお届し、飲酒運転の徹底取締りと、強力な交通安全指導をお願いしたのでした。

 特進コース2年の木村直人君は某社の主催する懸賞論文に「三人の友だちの命を未来に生かすために」と題して応募し、文部科学大臣奨励賞を獲得しました。飲酒者の運転を拒否するメカの開発や、被害者を守る新しい自動車損害保険の創設を提唱したもので、悲惨な交通事故発生に歯止めをかけたいとの意見を、熱っぽく全国に向けて発信したものでありました。

 昨年の事故で、在校生や被害を受けた生徒たちの中で、精神的に大きな痛手を受けた方々がありました。学校の手だてとは別に生徒は生徒同士で、いたわり、支えあい、寄り添うことが出来ました。その「心の絆」が「心のケア」となり、今は学園全体に落ち着きと活気がもどってきました。そして理想的な社会とは、安全で事故の無い社会であることを実感するようになりました。

 しかし、今の社会は、人間の生命の「安全確保」について、無頓着で、誰もがその点で、不信や不満を持ち、いらだっていると思います。いつ、どこで、何が起こっても不思議ではないところまで来ているからです。

 過去は変えられませんが、未来は変えられると信じます。私たち仙台育英生は、一人ひとりが「安全な社会の構築」というテーマを持って、日々実践し、努力を継続していくべきではないかと考えます。

 会場の関係で、今日は、すべての育英生が一堂に集うことは出来ませんでしたが、私たちは、在りし日の、純粋な三人の姿をまぶたに浮かべ、また、よき友として、心の中に永遠に抱き続けていきたいと思います。

 「安全・安寧のつどい」にあたり、心の一端を述べ、生徒代表のあいさつといたします。
 
平成十八年五月二十二日
仙台育英学園高等学校生徒会
代表 菊田
 
 
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