「宮城県飲酒運転根絶に関する条例」制定の御礼に県庁訪問
 
 

 10月の県議会(総務企画委員会)において、飲酒運転根絶を目指す条例案が全会一致で可決されました。この条例案は議員提案条例で、平成17年5月22日の悲惨な事故を契機に作成されたもの。条例の中には下のような文があります。

 「…平成十七年五月二十二日には、飲酒運転により、学校行事に参加中の高校生の尊い命が奪われる交通死傷事故が発生し、県民に大きな衝撃と深い悲しみをもたらした。
 飲酒運転の根絶は、県民すべての願いである。車を運転する者は、飲酒運転が引き起こす事故の重大性、一瞬にして人命を奪う車の危険性を十分に認識し、最大限の注意を払って安全運転を実践しなければならない。また、車を運転しない者も、家族や友人を加害者とさせないよう、飲酒運転をさせない環境を地域社会とともにつくり上げる必要がある。
 よって、私たちは、県、市町村、県民等が一体となり、「飲酒運転は犯罪」との意識のもと、「飲酒運転をしない・させない」という強い意志を持ち、飲酒運転の根絶に向けて取り組むことを決意し、この条例を制定する。」
(「宮城県飲酒運転根絶に関する条例」より。
条例の全文は、
http://www.pref.miyagi.jp/kengikai/giin_jyourei/inshuunten_jourei.htm

 
 
年が明けた平成20年1月1日から、この条例は施行されることになります。

 条例可決にともなって、11月29日、飲酒運転根絶のためお署名運動を中心になって進めた本校前生徒会長・副会長、加藤雄彦校長、ご遺族代表等9名で県庁を訪問。村井知事、高橋県議会議長を訪ね、条例制定に尽力いただいたことへの御礼を述べました。
 下に訪問の様子を紹介します。

 
   

 
【村井知事への御礼】


加藤雄彦校長

 平成17年5月22日のあの悲惨な事故以来、村井知事にも、当時県議会の議員でいらっしゃったというお立場の中で大変心を痛めていただき、私どもには多大なる心の支えをいただきました。その後、生徒会の面々を中心に、また保護者会も含めて、いろいろな形で活動してきたことを県として真摯に受け止めていただきまして、平成20年1月施行の県条例に至ることになりました。お願いにだけ上がっていて御礼に上がらないというのは、本学園の「至誠」の精神に反することですので、御礼に上がらせていただきました。ありがとうございました。


菊地恵莉 (前生徒会長)

 平成17年5月22日、飲酒運転、居眠り運転、信号無視など数々の法律を無視したRV車により、私たちの仲間3名が尊い命を奪われました。私たち仙台育英学園高等学校生徒会は命の尊さと交通事故の重大性をしっかりと認識し、安全で快適な交通社会を確立するため、痛ましい事故の根絶を目指して飲酒運転根絶の署名活動を行いました。
 目標であった10万人を大幅に越える18万1,388名もの方々より署名をいただき、その署名簿とともに村井県知事に県としての取り組みをお願いいたしました。その結果、全国に先がけて宮城県飲酒運転根絶に関する条例として平成20年1月1日から施行されることになりました。大変ありがとうございます。私たちもより一層、飲酒運転根絶に取り組んでいくことを誓い、御礼の言葉といたします。


片岡亮(前生徒会副会長) 

 まずはじめに、このような機会を作っていただき、ありがとうございました。この条例を機に、宮城県県民のみなさま、また、全国のみなさまの飲酒運転撲滅に対する意識が高まっていければ嬉しいと思います。


川村由望香(被害者代表)

 私も事故のときに怪我をしていまだに通院をしているのですが、このような条例ができて、とても嬉しく思います。これからも少しずつ減ってきてはいるので、どんどん飲酒運転が減って、私たちが遭ったような悲惨な事故が起きないようになればいいと思います。


細井実(遺族代表)

 事故で細井恵という娘を亡くしました、細井と申します。よろしくお願いいたします。
 今日は本当にありがとうございました。思い返せば事故が起こってから3カ月ぐらい経ったときだったでしょうか、気が動転していてまだほとんど気持ちの整理がつかない渦中だったと思いますが、仙台育英学園のPTA会長をなさっていた大學先生にお手紙を差し上げました。大學先生は議員をされていたので、県政に対するお願いがあるということで、そのときは「条例」という言葉は使いませんでしたが、5月22日を県民が永久に忘れない日にしてほしいと、そのために県政としてできることを考えてほしい、ということを大學先生にお願いしました。
 その後、仙台育英の被害者救援会との話し合いの中で、条例を希望しようということになりまして、そうして、学校をあげての署名活動が始まりました。その成果が県議会から県庁に届きまして、この日を迎えられたと思っているところでございます。
 8月には県議会の特別委員会で意見の陳述をさせてもらいました。思うところはたくさんありまして、今回の条例が100パーセントだとは思っておりません。特に駐車場関係者に関する問題であるとか、県民全体に対する通告の義務化であるとか、いくつか申し上げたことで達成されていないこともあります。しかしながら全国に先がけてこのような条例を作ったという宮城県議会、宮城県の先見性と遺族を含めたこの事故に対する同情の気持ちに深く感謝しています。
 現状報告をいたしますと、去年の2月、運転していた佐藤光の20年の危険運転致死傷罪の刑は確定いたしまして、彼は現在刑務所に服役中です。その後、民事訴訟を起こしておりましたが、民事訴訟につきましても、10月31日でしたか、判決が出まして、同乗者も含めて、賠償責任が認められたということで画期的なものになっております。その後、検察審査会のほうからも同乗者を危険運転致死傷罪のほう助罪ということで起訴することが相当であるという判断をいただきました。これは全国でも初めての事例でございます。道交法のほう助罪についてではなく、刑法の危険運転致死傷罪のほう助罪を適用すべきだという判断をいただいたところです。警察庁の判断ではありますが、速やかに同乗者に対する裁判が始まることを期待しています。
 改めまして宮城県県議会、県庁、県民のみなさまにここまで支えてきていただいたこと、またこの条例を通して飲酒運転根絶に向かってご努力いただきますことに心より感謝申し上げたいと思います。


中野広光(PTA会長)


 私ども父母教師会としても父母教師会一丸となって事故に遭われたお子さん、ご遺族の方々、ご家族の方々を含めて心と体のケアに力を入れてまいりました。その中で生徒たちが新たにまた一歩進んで、事故のない社会を作りたいという気持ちから署名活動を行いました。それが今回の条例という形で実を結んだことは、親としてもたいへん嬉しく思っております。
 この条例ができたということに関しましては知事をはじめ行政サイドの方々のご尽力と県議会議員のみなさんのご努力の賜物だと改めて感謝いたします。同時に、条例という形ができても守るのは人間です。ひとりひとりの人間が意識を変えていかなければだめなのだと思います。そのためにも道交法など社会的な気運が大きく盛り上がってきたのがひとつ、大きな成果だったのではないかと思っています。そういう意味で改めて生徒たちの10万人の署名というものの力の大きさを感じているところです。
 今後とも子どもたちが安全で安心して学業に邁進できる環境を作るために私どもも努力してまいります。ぜひ知事をはじめ、行政のみなさま方もそのような社会を作るという観点での引き続きのご支援をよろしくお願い申し上げます。
 
   
   
村井嘉浩 宮城県知事

 本日は大変お忙しい中、どうもありがとうございます。心から感謝いたします。
 この条例は言うまでもなく平成17年の不幸な事故を契機といたしまして、県議会議員 ー私も当時、県議会議員でございました、大學先生も県議会議員でしたー そういったみなさまの気持ちをしっかりくみ取って、県議会として飲酒運転をなくすという意思表示をしなければならないという思いから条例の検討をはじめたわけです。さまざまな議員の方々のご努力により、今回このように成立させることができました。本当に画期的なことだと思います。
 しかし、このような条例を作ったとしても亡くなられた3名の尊い命が返るわけではございません。このような不幸な思いをする方がこれから出ないようにしなければならないと意を強くしております。
 この条例の中で県の責務として基本方針をしっかり定めてということでございますので、県議会議員のみなさんが作られました条例でありますが、しっかりとした形となるよう努力をしてまいりたいと思っています。
 12月の県政だよりに、飲酒運転のことについて書かせていただきました。県政だよりは12月に入りますとみなさんの手元に届くと思いますが、その中でも仙台育英学園の事故のことについて、短いコメントですが書かせていただきました。
 みなさま方がわざわざ来られましたことをしっかりと受け止めまして、二度とこういった事故が宮城県では一件も起こらない県にしていきたいと思っております。これからもご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。


大學 幹男(前PTA会長)


 今日の日を迎えられましたこと、当時かかわった一人としてこんなに嬉しいことはありません。そして亡くなられたお三方に報いることができたのかな、そして今闘病中の子どもたち、ご家族のみなさんの気持ちも含めて、お気持ちに少しでも私たちが報いられたのかな…そんな思いを今、抱いています。
 村井知事におかれましては、しっかりと飲酒運転撲滅を実行すると約束していただきまして、こんなに心強いことはございません。
 これを私たちもしっかり肝に銘じて心の中から飲酒運転がなくなることを願い、心に誓い、この条例がそういう意味で生かされることを思いつつ、可決をいただきましたことに感謝を申し上げさせていただきます。
   
   
【高橋県議長への御礼】  
   
   
高橋長偉 宮城県議会議長

 改めましてわざわざお越しいただきまして御礼をいただきますこと、みなさんのお気持ちを大変嬉しく思い、感謝申し上げます。
 この事故の件で大変衝撃を受け、これは議会としても何とかしなければならないという空気が一気に盛り上がりました。生徒さん方が街頭に出向いて署名活動をなさる姿を日々、我々も拝見させていただきまして、議会としても何らかの飲酒運転根絶に関する行動を具体的に起こしていかなければならないという思いで、特別委員会の中で早速、条例を制定しようという動きが起こりました。
 ところがちょうどそのときに国で飲酒運転の罰則強化の法律改正を行うという話が伝わってまいりました。国の法律の改正がどういう状況になるのかを見極めながら条例を制定していかないと宮城県としての条例にはなかなか成り得ないという背景もありましたので、少し時期は遅れましたが、改めて今年に入りましてから当時の特別委員会のメンバーがワーキンググループを作って、その中で国の法律改正を踏まえて、条例制定ということで可決をしていただいたという経緯があったわけです。
 私どもとしては正直、条例の制定に関してはどれほど効果のあるものにしていくかという中身でだいぶ苦労した経緯がありました。その結果、制定までの経緯が結構長い時間かかったわけですが、それがマスコミ等に取り上げられて、また生徒さん方のご努力もありまして、県内の飲食業のみなさん方にもだいぶご支援をいただくことにもなりました。これはひとえに生徒さん方のご努力の結果です。私どもも生徒会のみなさんには敬意を表したいと思っています。私たちが制定いたしました条例が少しでもこういう悲しい思いを二度とさせないようにするためのお役に立つことになるかと大変嬉しく思っている次第です。
 ただし、これは私ども関係者だけが努力してもいかんともしがたいことです。先ほど会長がおっしゃいましたように、この条例を基本にして、これから県民、特にドライバーの意識をどうやって高めていくか、私どももしっかり見守りながら啓蒙、啓発に努めていかなければならないと思っています。条例を作ったからそれで事故や飲酒運転がなくなるわけではないのです。その点をしっかり踏まえて、条例の効果がいっそう発揮できるように、今後とも議会として取り組んでまいりたいと考えております。
 私も当時は非常に衝撃を受けました。学校で献花を受け付けるという話を聞き、私も全くフリーの立場で献花をさせていただきました。今後ともしっかりみなさん方のご意向を踏まえて、議会としても更なる努力を重ねてまいりたいと思います。どうぞよろしくご理解をいただきたいと思います。
 
 
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