平成17年8月9日午後1:30〜2:30
仙台市地方裁判所第102号法廷
   

裁判長の人定質問

被告人氏名 佐藤 光    
生年月日  昭和**年*月*日
年  齢   26歳
本  籍   宮城県多賀城市山王
住  所       〃   
職  業   解体工

   
検察官の起訴状朗読

 被告人佐藤光は平成17年5月22日早朝、仙台市宮城野区小田原の国道をアルコールによって正常な運転が困難な状態で車を運行し、同中野付近においては仮睡状態がおこり、急加速や減速、蛇行したりしながらもさらに運行を継続した。さらに午前4:15ごろ、仮睡状態のまま信号機が赤の多賀城市八幡一丁目交差点に侵入。横断歩道が青で歩行者の横断待ちしていたTの車に衝突させ、Tの車を左前方の歩道に激突させた。さらに青信号で横断中の齋藤大、細井恵、三澤明音を死亡させ、他15名に重軽傷を負わせたものである。負傷者は後に述べるがそれぞれ骨折、筋肉損傷、打撲等さまざまである。死亡者は当初齋藤大、細井恵2名であったが、三澤明音は東脳外科において死亡。

重軽傷者は以下の通り
1:全治3か月の重傷 横断歩道歩行中
2:全治2か月の重傷 横断歩道歩行中 
3:全治3か月の重傷 横断歩道歩行中 
4:打撲損傷等 横断歩道歩行中 
5:全治3週間の頚骨捻挫等 横断歩道歩行中 
6:全治2か月の骨盤骨折等 横断歩道歩行中 
7:全治2か月の頭部・右膝打撲 頚椎捻挫 横断歩道歩行中 
8:全治2週間の頚椎捻挫打撲 横断歩道歩行中
9:全治2週間の左大腿部損傷・骨盤損傷 横断歩道歩行中
10:全治1週間の左膝・右肩損傷 横断歩道歩行中
11:全治10日間の頚椎捻挫・左右膝擦過傷 横断歩道歩行中
12:右膝・鎖骨打撲擦過傷 横断歩道歩行中 
13:全治10日間の擦過傷 横断歩道歩行中
14:腰椎捻挫 横断指導中
15:全治1か月の左大腿部損傷・頚椎捻挫 信号待ち車内
   
裁判長の黙秘権等の告知
 被告人は本裁判において被告人に不利になることは答えないことが出来ます。
 なお、法廷において答えたことは裁判の証拠となります。
 
被告人・弁護人の起訴状に対する認否
   
裁判長: 被告人は今の起訴状朗読に関し、何か言いたいこと、話したいことはありますか。
   
被告人: 酒を飲み運転中に居眠りをして事故を起こし、3名の方を死なせ、また多くの方に怪我を負わせたことは本当に申し訳なく毎日反省をし、毎日自分を責めています。本当に申し訳ございませんでした。しかし、私の行為が危険運転致死傷罪かはよくわかりません。私は酒を飲んで居眠り運転したことは事実です。ただ、新聞で報道されているような泥酔状態ではありませんでした。一定の判断は出来たつもりです。運転をやろうと思ったときは、後ろめたさもあり、運転は慎重にしようと思い、気を張っていました。
   
裁判長: 起訴事実について述べてください。5月22日午前4:15ごろ酒を飲んで仮睡状態、泥酔状態で車を運転し事故を起こしたという事実はどうか。酒を飲んで運転が困難な状態で走行させたというこの辺はどうなのか。これについては?
   
被告人: 酒を飲んで運転した事実はあります。---------(それ以上答えず)
   
弁護人: 慎重に運転をしていたということです。被告人の申し上げているのはそのことです。
   
裁判長: 酒を飲んではいるが、泥酔状態での故意の走行ではないということですか。
   
弁護人: その通りです。
   
裁判長: その他のことについては間違いはありませんか。
   
弁護人: 先ほど申し上げましたが、飲酒していた、そして仮睡状態になり、その結果 として事故を起こしたということについては争うことはしないし、認めます。 しかしながら危険運転致死傷罪については慎重に検討を要します。危険運転致死傷罪については慎重に判断されるように申し上げます。 アルコールは確かに飲んだ、しかし故意に危険な運転したとはいい難いといえます。新聞報道等でイメージが作られたような全く運転など成すべき状態ではなかったのに、やったということではないということです。
   
裁判長: 危険運転致死傷罪については十分検討を要するということですね。
   
検察官の冒頭陳述

検察官:証拠については以下に述べる。

(1)被告人身上・経歴について

  東京都渋谷区に生まれる。塩釜市内高校中退。その後、土木作業員、トラックの運転手、解体工となり今に至る。過去に酒気帯び運転で免許停止期間90日等の処分3回。

(2)犯行に至る経緯

  被告人佐藤光は平成17年5月21日いったん帰宅した後、ニッサンサファリを借り、Sと飲みに行く約束をした。同車で午後9:00ごろ多賀城市栄の居酒屋で中ジョッキ1杯のビール(500ml)を飲んだ。

  次に2.8km離れた桜木のパブで焼酎のウーロン割り(300mlの2分の1)を飲んだ。さらに14.7kmはなれた仙台市青葉区国分町のクラブで20度の水割り焼酎(300ml)を10杯飲んだ。合計3軒で、自ら同車を17.5km運転した。 平成17年5月22日 午前3:30ごろ、Sとともにクラブを出て駐車場にむかった。過去にも飲酒により居眠り運転をし事故を起こした経験があり、代行運転も考えたが、3軒での飲酒により7万5千円を支払い、所持金も少なくなっていたため、日曜日の早朝でもあり警察の取り締まりもなかろうとの判断から、自らの運転でいけるところまで行こうということになった。被告人佐藤光はSを助手席に乗せ、駐車場を午前3:45に出た。

(運転経路については画面の通り)

 危険運転を承知で同車を運転し、本町1丁目で目をつむれば眠ってしまいそうな自覚があり、危険を認識しながらも運転を継続した。2、3の交差点付近では減速の必要性も感じ、急減速・急加速を繰り返して走行した。3の交差点で停車したが、このままいけるところまで少しでもいこうとさらに危険運転を継続した。被告人佐藤光は4の交差点を通 過後5の交差点で赤になったため停車。しかし信号が青になっても5〜6秒遅れて発進。6の交差点までは、第1車線から第2車線に入りあわてて第1車線に戻るということがあった。7、8の交差点では赤で通 過。9の交差点では赤で停車。青で2〜3秒遅れで発進。(中略)11の交差点において仮睡し交差点通 過後、×地点で事故が発生。

 本件は仙台育英学園の1学年の生徒450名が学校行事であるウォークラリー実施途中、本交差点の青に従い2名の誘導者の指導のもと(図でいえば)上から下へ横断しているときに発生したものである。Tの車ホンダアコードは赤であらわし、上から左に曲がろうとし、ウォークラリーの通 過を待っていたところである。

 事故発生時のT車は横断歩道手前に停車している。その前を歩行者は上から下に歩いていて、そこに被告人の車が侵入しTの車に衝突、歩行者をはねた。その後の亡くなられた方や、車の位 置関係等は画面の通りである。

 本件事故により死者3名を出し、15名が重軽傷を負わされた。亡くなったご遺族や被害者とそのご家族は被告人に対し、厳罰をもって対処してほしいと強く望んでおられる旨お伝えしておくものです。
 
  以上の事実を証明するため、以下の証拠を提出いたします。

  以下72件の証拠が提示され、被害者証言、現場検証した警察官からの証言、被害者の生い立ちや遺族感情等、被告人佐藤光の生活状況や飲酒運転の経歴等、各号の証拠の区分けの説明があった。

これに対し弁護人から次の3点に関し「疑念」ならびに「証拠追加」の申し立てがあった。

1. 仙台市青葉区国分町から事故現場までの居眠り、蛇行運転の事実証言に関すること。
  ※伝聞証拠につき証人を求めたい。
2. 飲酒の量についての事実証言に関すること。
  ※伝聞証拠につき証人を求めたい。
3. 人体のアルコール量に関する検査結果について今回入っていない。最も客観性をもった証拠になりうるため提出願いたい。

裁判長:次回の公判は9月5日午後1:30とする。
    以上をもって第1回公判は閉廷とする。
   
被告人佐藤光は危険運転致死傷罪で起訴されている

争点:被告人ならびに弁護人は飲酒し居眠りし事故を起こしたことは認め争わないが、 新聞報道等でなされているような泥酔状態や正常な運転ができないと認識しなが ら故意に危ない運転をしたという事実はなく、危険運転致死傷罪にはあたらず、 業務上過失致死傷罪であることを主張している。 なお、公判手続の流れを次頁に添付してありますので参考にしてください。                                         (文責:5.22対策委員会)
 
 
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