第9号
 

 
アイ・チャレンジ125
  - 国際理解教育バージョン -


学校法人 仙台育英学園 理事長
加藤 雄彦
 

 春先の寒さが影響したのか、多賀城校舎周辺の田植えの時期が心持ち遅れた感がする2010年、本学園は多くの方々のお支えをいただきながら10月1日に創立105年目を迎えます。

 特に心配された卒業生たちの就職活動は学級担任と就職部はもちろんのこと、学園職員が一丸となって取り組んできた結果、就職氷河期にもかかわらず100パーセント就職決定となりました。これも当事者である生徒の最後まで諦めない「ライオン・スピリット」と懸命に指導されてこられた先生方、そして7万人をこえる卒業生のみなさんのご厚情によるものと有難く思います。

 みずほ証券チーフマーケットエコノミスト上野泰也氏が指摘しているとおり、1993年と2000年にいくつかの消費財が低価格商品として世間の注目を集めたが、2008年からは多くの分野でさまざまな形態をとりながら消費財の価値を押し下げ、長期間に亘る深刻なデフレーションを生んできました。そして名目GNPの低迷がボディブローのように日本経済にダメージを与えてきた結果、家庭所得の格差や低迷が続いています。そのため大学進学においても保護者の経済負担が少しでも軽減される大学選びの傾向が強くなっています。

 そのような状況に応えようと、昼夜を問わず受験生に懇切丁寧に指導されている教育現場の先生方のお姿を見るにつけ、保護者が心に感じるものと同種の気持ちを抱きます。特に昨年4月から復活した土曜日平常授業の完全実施は、現役進学を熱望する受験生・保護者にとってどれだけ心強い贈り物になったことでしょう。指導者の献身的努力とこれまで信頼してついてきた生徒たちを賞賛します。そして素晴らしい成果を達成していただいたことに感謝いたします。

 さて、1963年(昭和38年)、本学園からアメリカ合衆国オレゴン州クースベイ高校に生徒1名を派遣し、交換留学生1名を受け入れました。同じく、初めての外国人講師チャップマン先生を英会話指導者として招聘した年でもありました。

 あれから47年間で延べ5000名が在学中に海外語学研修、海外遠征、交換留学などの形態で世界12カ国60校の姉妹校や教育機関にお世話になってきました。研修・遠征・留学期間も1週間程度から1年間にもおよぶ期間とさまざまですが、その場所でしか感じ取ることのできない貴重な経験をAway で苦労しながら得てきました。このことは彼らの人生のなかで大きな財産となっているはずです。

 一方、本学園にはアメリカ合衆国はじめ海外から7名の講師が英語、中国語を指導し、世界中から57名の留学生を本年受け入れています。そのため、海外研修・留学しなくても Home である本学園で海外から訪れた生徒たちと交流できる機会があります。

 そこで自分の国をどのように評価しているのか、世界でおきている出来事や国際情勢にどの程度の興味・関心を持っているのか、と最近の日本人生徒に問いかけたところ「世界にほとんど関心のない内向的な日本人」、「ジャパン・アズ・ナンバーワンと勘違いしている日本人」、「日常の便利さが供与されていることに疑問や危惧を抱かない日本人」、といった日本人像が浮かび上がってきました。

 このような思考で今後とも国際社会で平和にのんびりと暮らしていけるのであれば、それに越したことはないと思います。しかしながら、弱肉強食、隙あれば自国の利益の増大に奔走し、国際情勢に精通しながら狡猾に渡り歩いている諸外国と外交、軍事、経済、法律などのさまざまな分野で日本人は生き残っていけるのだろうかと素朴な疑問を持ってきました。

 去る3月16日、アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル市内に関係機関からご許可をいただき、「I-Lion Hawaii School」(通称ILHA、イルハ)の名称を持つ現地校を10月1日に開校するために準備に入ったのも上記の疑問と日本人高校生の将来を危惧したからです。

 具体的な教育内容は現地の教育関係者と関係教育施設の協力を得て、[English as a Second Language]、[Social Studies]、[Sports&Activities]の3教科を中心に2週間から4週間の授業(週5日)を午前と午後に実施します。

 さらに滞在期間中は現地の専門仲介機関の協力を得て、ホームステイ・プログラムを実施し、地元の生活・習慣を生で体験します。

 そしてILHAが定めた教育内容を履修し、修了が認められた場合は、仙台育英学園高等学校の第2学年教育課程に設けられている「海外研修」(2単位)もしくは「地域研修」(1単位)、あるいは秀光中等教育学校前期課程第2学年に定められている「総合的な学習の時間」(70時間)として単位認定できるように整備しています。

 現地校ですので、1学校年間をハワイ州にならい、9月から8月までと定め、1年間で少なくとも150名の秀光生と育英生が保護者の費用負担を極力軽減しながら渡航させたいと想定しています。(実際の費用の詳細は国際センターからお知らせします。)

 これから現地ハワイにおいて、関係職員は新設校を軌道に乗せるためのご苦労も多いことと思いますが、策定された5ヵ年事業計画に則り、地元との教育交流を深め、積み上げられた実績に基づいて公的機関からILHAの認証資格が格上げされるように努めていただきたいと期待しています。

 学園関係者をはじめ生徒・保護者そして同窓生のみなさんにはHome&Awayの両面が機能するILHAの成長と発展にご理解とご支援賜りますようにお願いいたします。

 
 
 
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