第12号
 

 
アイ・チャレンジ125
  - 東日本大震災復興バージョン3 -


学校法人 仙台育英学園 理事長
加藤 雄彦
 
  2010年8月にインドネシア共和国バンドン市教育委員会視察団が本学園に初めて来校して以来、途中大震災による来日中断があったものの同市教育関係者や姉妹校となった現地高校の生徒との教育交流が加速しているように思います。我々日本人にとってイスラム教信者の日常生活や習慣は不思議に見える部分が多く、特に食卓に並ぶ食べ物には気を遣い、戸惑いを隠すことができません。
 イスラム教には豚肉やアルコールをとらない戒律があり、食品は戒律に従って製造された「ハラル認証」が求められます。この「ハラル認証」は各国のイスラム教関連団体が商品や製造工程を調べて認証しているのが一般的ですが、インドネシアの隣国マレーシアでは政府が1994年に「ハラル認証」のマークを導入し、イスラム圏にハラル食品の輸出をナショナルプロジェクトとして奨励するようになりました。同国の認証制度は厳格で、製品ごとに認証を求められ、原材料の中身や保管方法はじめ製造工程の抜き打ち検査が行われる徹底ぶりが際立っています。
 このハラル食品を取り扱う企業にとっては世界人口のおよそ4分の1にあたる20億人規模のイスラム教徒が対象となり、業績拡大を窺うビジネスチャンスです。特にインドネシアをはじめアジアのイスラム圏のように人口増加と経済成長が著しい地域は有望な市場ということになるでしょう。
 このところ日本国内の大学には経済力をつけたイスラム圏からの留学生が目立つようになってきました。6月初旬に訪ねた京都の同志社大学(今出川キャンパス)学生食堂の正面掲示板にはハラル食品を扱っていることを明確に伝える工夫がされており、大学としてイスラム圏からの学生確保を意識した取り組みがなされているように受け止めました。このようなハラル食品に関する対応は東北大学をはじめとする国立系大学でも進んでおり、近い将来日本国内の高等教育機関では普通に見られる光景になると想像できます。本学園では先進的に取り組んでいるこれらのケースを研究してインドネシアからの留学生が食生活で困らない環境を作れるように努めていく考えです。
 なぜならば、大震災と福島第1原発事故による風評により仙台は危険な所であると認識する国が多いなかにあって、バンドン市教育委員会が本学園に向けて示してくれている姿勢は復興に向けての励まし以外の何物でもないと感じているからです。
 大震災後、策定された第1次仙台育英学園東日本大震災復興計画(5月)並びに第2次同計画(8月)の実行に当たっては建築資材の不足や現場作業員の確保が困難な状況にもかかわらず、株式会社盛総合設計、株式会社大林組東北支店をはじめとする工事関係者の並々ならぬ努力の賜物により本年3月24日、奇しくも本学園創立者加藤利吉先生の52回忌の日に竣工式を挙行することができました。
 その前年1月23日に安全祈願祭を行ってから1年2カ月の工事期間で5階建て(一部4階建て)3棟、床面積1万7916平方メートル(語呂合わせで「いいな、苦労は一番報われる」)を建て替えることができましたことは文部科学省私学部、宮城県総務部私学文書課はじめ学園関係の皆さまのご支援のおかげであり、平成24年度末完成という絶対期限を遵守することができましたことは感謝の一言に尽きます。
 これからは今まで温めていた第3次仙台育英学園東日本大震災復興計画を今年度中に発表できるように進めて参りたいと考えていますが、計画の裏付けとなる資金計画、本学園宮城野校舎隣地を含めた土地の収用計画等を事前に関係機関とその内容を協議、調整していくことから始めたいと考えています。第3次同計画に向けて、なにとぞ、これからも皆さまの温かいご支援ご助力をお願い申し上げます。

 
 
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