第14号
 

 
アイ・チャレンジ125
  - 東日本大震災復興バージョン5 -


学校法人 仙台育英学園 理事長
加藤 雄彦
 
 日本列島は火山大国であることを改めて知らしめた口永良部島(くちのえらぶじま)新岳の爆発的噴火が5月29日に発生し、全島民がとなりの屋久島に避難する報道があったことは皆様の記憶の上で新しいものだと思います。
 西日本を形成するユーラシアプレートの下には南海トラフや琉球海溝で接するフィリピン海プレートが沈み込んでいます。この境界線沿いに九州から南西諸島へと帯状に活火山が並ぶ地域にこの島があり、阿蘇山、桜島や雲仙普賢岳と共に活発な火山活動を続けています。国内の火山活動は地震を引き起こす海底のプレート運動と関連が深いと考えられており、プレートの沈み込み一帯で溶けた岩石がマグマとして上昇し、火山を形成してきたと広く解釈されてきました。
 2011年3月東日本大震災が発生した領域には日本海溝があり、今回の噴火した地域を含め西日本には南海トラフとほぼ平行に活火山が分布しています。巨大な地震の後には活発な噴火活動が起きると言われる時期にあって、今後も全国あちこちで火山活動を起因とする自然災害が人々の日常生活や経済活動を脅かすのではないかと憂慮されます。
 国内で大規模地震後に噴火が起きた例としては、江戸時代中期の宝永地震(1707年)の49日後の富士山噴火があります。逆に、平安時代の富士山の貞観噴火(864年)は東日本大震災と同じ規模と想定される貞観地震(869年)や南海トラフが震源の巨大地震とされる仁和地震(887年)の前に発生しています。科学的根拠に基づいて明確に説明することが困難な部分があったとしても、過去の出来事や現在進行形で起きていることを総合して思慮すると、やはり日本列島は地震や火山等の地殻変動の活発な時期に入ったのではないでしょうか。
 そうであるとすれば、4年半前の巨大地震に準ずる自然災害が高い確率で起きることを日頃から想定して、減災するための備えが改めて求められていると痛感します。
 本学園は今年10月1日に創立110周年を迎えます。同時に多賀城校舎開設30周年、秀光中学校から数えて秀光中等教育学校開校20周年の節目の年です。しかしながら、この間本学園は三度の致命傷となり得た災害と向き合ってきました。
 一つ目は1945年7月10日アメリカ軍空爆によって、外記丁にあった校舎の焼失と戦後占領軍による校地の強制退去命令(その後仙台市による公園用地への繰り入れで二度と再び帰還できないこととなりました。)です。
 二つ目は1965年3月10日不審火によると思われる宮城野校舎の第二北辰、図書館、体育館の焼失です。
 三つ目は2011年3月11日東日本大震災で宮城野校舎は甚大な被害を受け、授業再開に向けて緊急の大規模修繕工事を行っていた最中に発生した4月7日の最大余震(マグニチュード7・4)による宮城野校舎(栄光、第一北辰、記念一号館、南冥)の壊滅的損害です。
 これらは起きた原因こそ異なりますが、「戦災」、「火災」、「天災」であり、歴代の学園責任者をはじめ関係者が命がけで復興事業に取り組み、最大苦難を乗り越えてきた歴史そのものです。その危機にあって根底に流れているのは「負けっちゃくない。」と会津弁で語られる「逆転の仙台育英」の思想です。
 学園創立125周年に向けて設定された「アイ・チャレンジ125」のスローガンは学園の安定した財政運営と理想的な教育環境をバックボーンとして、郷土宮城、祖国日本の礎となるべき人材の育成を目指し歩んでいく覚悟そのものです。皆様におかれましては、震災復興事業と事業継続のために要する多額の負担により厳しい財政運営を強いられている現実を認識して頂き、変わらぬご支援を賜りますようにお願い申し上げます。

 
 
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