清貴さんにInterview
 
 

▼清貴さんがデビューしたのは、高校生のとき。今日はその世代の生徒たちを前に演奏されたわけですが、感想は…。

 CDデビューは17歳、高校3年生のときです。今日、演奏しながら「僕もあの頃はシャイなところがあったかな」とか「あの頃、目の前にアーティストが現れたら、僕自身、どんな反応をしただろう」なんてことを頭に思い浮かべながら演奏していました。


▼いまの日本の高校生はシャイに見えましたか?

 僕はいま、アメリカで活動しています。アメリカは、ちょっと抽象的な言い方ですが、“オープンな文化”の国。知らない人でも積極的に話しかけてくる。そんな文化の中にいると、よけいに日本の若い人たちが“シャイ”に見えてくるのかもしれません。
 でも、おとなしいのは良いのですが、少し不安なのは、「日本の若い子の多くが保守的になってきているのでは」というふうにも感じられること。見ていると、「前の世代が築いてきたものの上で不自由なく生きていくことができる。だから、“なにかを求めて必死になって生きる”なんてことをしなくてもやっていける」という内向的な雰囲気に支配されてしまっていないかという気がすることです。
 世の中を変えていくのは、若い人たちの“変えていこう”という思いであり、パワーだと思うのです。そういう意味で、若い人たちには「もっと外に出ていこう」と僕は強く言いたい。
 僕自身、「アメリカで音楽をやって成功しよう!」という思いで突っ走ってきたし、いまも僕自身のテーマに全力で取り組んでいます。「自分も外に出て、なにかやってやろう」。聴いてくれる人たちがそんな気持ちを抱いてくれることを望みながら、僕は歌い、演奏しています。


▼17歳のときも、テーマは「アメリカに出て、成功しよう」だったのですか?

 当時は違いました。とにかく音楽が大好き、人前で歌っていたい、曲をつくってみたい…そんな思いでいっぱい、そんな気持ちだけでした。ですが、プロフェッショナルになり、音楽が“仕事”になってくると、いろんなところで葛藤や閉塞感が出てきました。そんなときに浮かんできたのが、「自分が影響を受けて来た音楽の本場に行って、自分の可能性をとことん試してみよう」という思い。それでアメリカ行きを決意しました。2010年のことです。

 

▼いま、アメリカで…、いかがですか?

 現在、ニューヨークで活動していますが、ニューヨークで暮らしていて感じるのは、自分自身をしっかり持っていないといつのまにか流されてしまうということ。ニューヨークは時間だけでなくいろんなことがとても速く流れるし、また、いろんなことをしようとたくさんの人たちが集ってきている街です。それがニューヨークという街をとてもおもしろくしていますが、一方では、なんとなく暮らしているといつの間にか流され、自分を見失ってしまう。自分自身をしっかり持っていないと、前に進むことができない。でも、だからこそ、僕はニューヨークで活動をはじめたことで、「自分は何者なのか」「自分は何をやりたいのか」という自分自身のテーマがクリアに見えてきたような気がします。これはとても大きな収穫です。

 

▼若い時期に「外に出てみること」は、大切ですか?

 海外に出てみることはとても良いことだと思います。たとえば半年、あるいは1年間、海外に身を置いて生活してみる。そうすると、今まで考えもしなかったことについて発見できることがとても多いはずです。
 海外にいれば、日本がいま、世界からどのようにみられているのか、いまの日本の状況は、といったことがはっきり見えてくる。国内にいると、これらはなかなか客観的に見えてきません。
 たとえば、日本の歴史ひとつとっても、日本国内にいればさほどの知識はなくても生きていける。ですが、海外にいれば「日本はなぜそうなのか」といったことが問われます。知らなければ「なぜ知らないのか」と…。“知ること”への気付きがあれば、人は勉強し、深く考えるようになります。そして前へと進んでいきます。前へと進み始めると、さらに先が見えるようになってきます。そして、「自分は何をしていくべきか」がしっかり自覚できるようになります。
 そんな意味で、海外に出てみることはとても大切、と僕は考えます。みなさんにも強く勧めます。