2013 Topics

 第7回サイエンス・コ・ラボ

 
人間の体内で働く“酵素” 自然界に学ぶテクノロジーで 電気をつくる
 
第7回サイエンス・コ・ラボの様子
第7回サイエンス・コ・ラボの様子 第7回サイエンス・コ・ラボの様子
 
第7回サイエンス・コ・ラボ

日 時:2013年12月7日(土) 13:00〜17:00
場 所:宮城野新校舎 新“南冥” 理科実験室
テーマ:『酵素で発電』
参加生徒:秀光4・5年生および
      理系の特別進学コース1・2年生(希望者)
講 師:東北大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻
     バイオマイクロマシン工学講座
     西澤 松彦教授
     大学院生 2名

 「酵素はタンパク質です。アミノ酸が繋がった紐のようなものです」、「アミノ酸は20種類あり、その組み合わせによって、人間の身体の中には、何万種類という酵素が働いています。今この瞬間も作っては壊し、作っては…と、皆さんの身体の中で再生と解体が常時起こっています」。東北大学の西澤松彦先生が今回のテーマである“酵素”について説明すると、生徒たちは納得した表情で頷きます。

 秀光中等教育学校と仙台育英高等学校の特別進学コースによる理科の共同実験講座『サイエンス・コ・ラボ』。12月7日、今年度の第7回が実施され、指導のため東北大学大学院工学研究科から、教授の西澤松彦先生、助教の三宅丈雄先生、そして2名の大学院生にお越しいただきました。今回は、酵素を利用し、反応が穏やかで安全な発電をしようという内容です。

第7回サイエンス・コ・ラボの様子 第7回サイエンス・コ・ラボの様子


可能性を秘めた酵素発電は
世界で大きく注目されています


 酵素を使用した発電は、まだ実用化はされていませんが世界的に非常に注目されています。西澤先生は、人間の体内にある酵素が食べた物をエネルギー変換したり、酸素を体内に取り込むために重要な役割を果たしてくれていること、そしてその酵素により発電ができると説明してくださいました。おにぎり1個には単三乾電池120個分のエネルギーが含まれているそうです。
 「私たち人類もいろいろな触媒をつくり出していますが、皆さんの身体のなかにある酵素までの精度は真似できません。天然のテクノロジーは凄いことをしているんです」と、いま研究者の間では天然の生命システムの力を借りたり、真似をしてみる研究がすすめられていることも教えてくださいました。

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紙に電気が通る!
“ナノ墨汁”を使用して…

 助教の三宅先生による道具の説明のあと、東北大の皆さんが用意してくださったのは、習字の半紙と墨汁。実はこの墨にカーボンナノチューブが含まれており、非常に貴重な“ナノ墨汁”です。「書きたい字を書いてくださいね」という三宅先生の言葉に、生徒たちは思いのまま、化学、生きる、倍返し…など、好きな文字を書きました。テスター(回路計)を使い、ナノ墨汁で字を書いた部分に電気が通ることを確認したら、バイオ電池と測定回路の作製に入ります。

第7回サイエンス・コ・ラボの様子 第7回サイエンス・コ・ラボの様子

より良い性能を競って、
各班ごとにバイオ電池と測定回路作り

 つぎは班の中で2つに分かれて、バイオ電池と測定回路を組み立てます。今回班ごとに作製したバイオ電池は高い発電性を持つ順にランキングを付けることになり、もっとも数値が高く、性能が良いバイオ電池を完成させようと、生徒たちも気合いが入ります。
 測定回路の組み立てとバイオ電池を作り終えると、その二つを繋ぎ合わせてテスターで通電性を確認し、電流や電力を計算してグラフ化しました。最後の結果発表では、なんと1位の班はかなり高い数値が!じつは結果については偶然の要素が多い、という説明もありましたが、西澤先生から「驚異的な数値ですね!きっと丁寧にしてくれたのでしょうね」と誉めていただきました。

第7回サイエンス・コ・ラボの様子 第7回サイエンス・コ・ラボの様子
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清涼飲料水での発電
LEDライトを点滅させよう

 清涼飲料水を利用して発電し、計測器に取り付けたLEDライトを点灯させます。用意されたのはコーラ、ゼロカロリーコーラ、カルピスウォーターの3種類。試すと、グルコース(ブドウ糖)が多く含まれているほど発電量が多く、ゼロカロリーコーラは発電しませんでした。
 最後に西澤先生からバイオ電池は有機物なのでごみ処理が簡単で、反応が穏やかなので安全性が高いことや、東北大学の工学部についてとても詳しく説明していただきました。
 全7回にわたって実施された今年度のサイエンス・コ・ラボ。今年も生徒たちの“もっと知りたい”という知的探究心を満たしながら、実際に体験できる、絶好の機会となりました。全面的にご協力いただきました東北大学の先生方をはじめ、大学院生の皆さん、本当にありがとうございました。


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