第68回全日制課程 卒業証書授与式 答辞【全文】
 

 肌を刺すような寒さも和らぎ、日差しも温かくなりつつある今日この日。とうとう私たちの卒業する時がやって参りました。私たちの為に、このような厳かで晴れやかな卒業式を挙行してくださった先生方と在校生の皆さん、ご多忙にもかかわらず足を運んで頂いた大勢の方々に、卒業生を代表して御礼を申し上げます。

 先程は、加藤雄彦校長先生をはじめ、ご来賓の皆様、そして後輩から力強い励ましの言葉と温かい餞の言葉を頂戴し、新たな門出を前に身が引き締まる思いです。白駒の隙を過ぐるが如しという荘子の言葉のように、仙台育英学園で過ごした日々は瞬く間に過ぎ去って行きました。真新しい制服に身を包み、期待と不安と緊張の中、右も左も分からない校舎の門を潜ったあの日から、早くも3年になろうとしています。改めて思い返しますと、短く感じる3年間の中には、多くの掛け替えのない思い出が詰まっていることに気付かされます。クラスで団結し栄光を求めて競い合ったスポーツチャレンジや合唱コンクール、たくさんの出店や出し物で大盛況だった育英祭など、仲間と楽しいひと時を過ごした数々の学校行事。飲酒運転根絶を訴えたアイ・ライオンデー、110年の歴史を持つ本校の建学の精神に触れた会津研修など、普段の勉強では学べない貴重なことを学んだ行事もありました。また、部活動が盛んな本校では、コースや学年の垣根を越え、目標に向かって努力しあった生徒も少なくないことでしょう。行事や部活動だけでなく、日ごろの学校生活の中にも多くの楽しい出来事がありました。時には苦しいこと、悲しいこと、面白くないこともあったかもしれませんが、今となってはそれもまた、思い出の一ページとなっているのではないでしょうか。これらの楽しく有意義な思い出と共に私たちは、今、次の一歩を踏み出そうとしています。

 入学当時の仙台育英学園は、新宮城野校舎が完成したばかりでした。震災後、そこに至るまで、先生方や先輩方に多くの苦労があったことは言うまでもありません。そのような逆境を乗り越えた姿は、「逆転の仙台育英」というスローガンを彷彿とさせるものではないでしょうか。そして私たちが過ごした3年間の中にも多くの逆転劇がありました。甲子園で準優勝を果たした野球部をはじめ、全国や東北の舞台で活躍した、たくさんの部活動、新たに資格や能力を習得するため、または、第一志望の進路を実現するために、検定や模試の結果にめげずに努力し続けてきた多くの同級生の存在がそこにはありました。私たちは、逆転を信じ最後まであきらめない力を培い、「至誠」「質実剛健」「自治進取」という本学園の建学精神と伝統を引き継ぐことができたと思います。私たちが羽ばたいていく社会は、決して平坦なものではありません。膨大な情報が溢れ、様々な主義主張が存在し、何が正しいことなのかが分かりにくい時代です。そのような社会で様々な苦難を乗り越えていくうえで、高校生活を通じて育んだ育英精神、知識、経験、技能、友情は必ず今後を生き抜く力になると信じます。後輩の皆さんも是非この精神と伝統を受け継ぎ、実践して行って下さい。

 最後になりましたが、私たちの成長と進路実現の為に、厳しくも熱心に指導してくださった諸先生方、陰ながら見守りいつも励ましてくれた両親、高校3年間でお世話になったすべての人に、心から感謝を申し上げます。そして、共に巣立つ662名の同期達とご列席の皆様がこれからもご健勝でご活躍されますことと、仙台育英学園の益々の発展を祈念し答辞とさせていただきます。


平成28年2月28日
卒業生代表 特別進学コース3年 門馬明富