Shukoh Topics 2009  
 
 

 秀光5年生5人が、工学系の“世界コンテストへの挑戦”というとてもユニークな体験をしました。
 コンテストの名称は「第1回 国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト』(iCan2009)。大学生や高専生、高校生が、次世代産業の核を担うと期待されるMEMS(微小電気機械システム)を活用したロボットなどの電子機械技術を競う大会です。主催は産学官でつくるMEMSの研究開発組織である「東北大学マイクロシステム融合研究開発拠点」等。この国際大会の国内予選大会が10月13日、東北大学の川内萩ホールで開催され、秀光の5人(2チーム)が出場しました。



京都大や大阪・信州・茨城大などと並んで
秀光5年生2チームが出場


 当日の予選大会には書類審査を通過した全国の大学・高専・高校の16組36人が出場。参加した大学は京都大学(5チーム)、大阪大学、信州大学、茨城大学(3チーム)と、そうそうたるメンバー。そして高専は豊田高専と一関高専、高校からは秀光と仙台一高の2校が書類審査を通過して参加しました。
 コンテストは、1チーム6分の持ち時間で加速度センサーなどを使って試作した電子機械の操作をステージ上で実演し、機能についてのプレゼンテーションを行い、そのアプリケーション(電子機械)の独創性や実用性などを競うものです。


牛の群れの健康具合を加速度センサーを
使った装置でチェックする

Orange squadron pink rangers
“Controlled Stockbreading System”

・5-M2 千葉 大志【栗駒小出身】
・5-M2 佐藤  世【鹿又小出身】
・5-M2 横尾 尚紀【逢隈小出身】

 秀光の2チームは、5年生男子3人による“Orange squadron pink rangers”チームと、5年生男子1人と女子1人による“Shukoh Horizon”チーム。
 “Orange squadron pink rangers”チームが作り上げたアプリケーションは“Controlled Stockbreading System”と名付けられたもので、一言で言えば、加速度センサーを利用して牛の“元気具合”をチェックするシステム。「アルプスで牧草を食べる牛の群れを思い浮かべながらアイデアを考えました」と、チームメンバーの一人である千葉くんは話します。
 「牛の首に加速度センサーのついた機械を装着します。健康な牛ならば定期的に草を食べるために首を上下に振り、この情報は加速度センサーの反応から得られます。逆に病気のために食欲がない牛は草を食べるための首振り運動をしないか、その回数が少ない。これら、装置を付けた牛からの情報をチェックすることで、群れの中から元気でなさそうな牛を効率的に見つけ出すことができるというわけです」(千葉くん)


掌の上の装置を傾けるだけで
スクリーン上のポインターが動く

Shukoh Horizon
“i-stick”

・5-M1 足立 佳奈子【開北小出身】
・5-M2 阿部   聖【荻浜小出身】

 そして、もうひとつの“Shukoh Horizon”チーム。こちらは“i-stick”というアプリケーション。これも一言で表してみれば、掌に乗せた装置でパソコン画面上のポインターを動かす装置。
 「プロジェクターを使ってスクリーンに動画とかを映して授業をしてくださる先生がいらっしゃったのです。その先生はいつもノートパソコンとスクリーンの間を忙しく行き来しながら説明をしてくださいました」とチームの足立さん。この“先生の頻繁な行き来をなんとかできないものか”ということで発想したのが“i-stick”とのこと。
 「加速度センサーを組み込んだ機械(i-stick)を手に持って傾ければ、その傾けた方向にパソコン上のポインターが動いていくというアプリケーションです」(阿部くん)。


機械/装置を組み立てるために
東北大学のサマースクールに通う


 ところで、彼らがこのコンテストへの出場を決め、アイデアを考えたのは今年5月。そして5カ月後の10月に大会出場へと至ったわけですが、そこまでのみちのりはけっして楽ではなかったようです。
 アイデアがあっても、工学部の学生や高専の生徒のように専門知識や技術・技能を持ち合わせていません。
 「夏休みの期間中に東北大の先生がサマースクールを開いてくださいました。ここで装置を作るためのハンダづけの仕方や回路の組み方、そして装置にはマイコンも組み込むのですが、そのマイコンのためのプログラムの作成の仕方も教えていただきました」(横尾くん)


専門分野の仕事に携わる秀光保護者の
アドバイスも受けながら


 そしてもう一人、秀光チームには力強い“助っ人”の存在がありました。秀光生の保護者の一人である大高さんです。大高さんはメーカーの研究所に勤務している技術者です。お仕事の合間を縫って秀光を訪ねてくださり、さまざまな質問へのアドバイスに応じたり、プレゼンテーション(大会当日のステージ上での発表)のためのコツなどを伝授してくださいました。


秀光、惜しくも受賞ならず、
1、2位は京都大、3位は信州大


 そして大会当日、参加チームの中で唯一の学生服姿である秀光2チームは、全力で6分間のプレゼンテーションを乗り切りました。写真がそのときの様子です。
 16組の発表の後に、東京大学名誉教授である養老孟司先生の特別講演。そしてその後に審査の発表がおこなわれました。今回の予選の上位3組には、来年1月、中国で開かれる本大会に日本代表として出場する権利が与えられます。
 審査の結果は…。残念ながら秀光チームには入賞の栄冠は輝かず、上位3組はいずれも大学生のチーム。1、2位が京都大学2チーム、3位が信州大学のチームでした。


すごく刺激的な体験!
大きな収穫を得ました !!


 ですが、秀光の5人は全員、口を揃えて「満足です、とても大きな収穫があった体験でした」とその日を振り返ります。
 「リハーサル中の楽屋で大学生の方々の作品を見せてもらいました。こんなアイデアもあるんだな、すごいなぁ、と驚きの連続でした。今回の体験はすごい刺激になりました」(横尾くん)
 「私も大学生の方々の発想のすごさに感動しました。私たちはまだまだ足りないのだな、と。私は工学部志望なので、今回のこの体験で得たことを大切にしながらいろいろ経験していって、専門分野の中で自分自身のキャリアを組み立て、積み上げていきたいと思いました」(足立さん)
 「僕は3人のチームの中で他の2人の意見をまとめたり、調整したりといった役割を担当しました。この体験は将来、社会に出てからも役立つ有意義なものだったと思います」(佐藤くん)
 5人それぞれに、それぞれの驚きと感動を持って大きな収穫物を得たようです。


扉をたたいて外へ出ていった
からこそできた貴重な体験


 最後に、このコンテストへの参加に最初から関わり面倒を見てくださった秀光の東海林恵子先生は、「生徒たちの将来に大きく役立つことになる貴重な経験だったはず」と話します。
 「今回のような経験は、学校の枠の中にいただけではけっしてできないものです。扉をたたいて外へと出ていったからこそ得られたものです。生徒たちは外からの刺激によって、脳ミソが思いがけない働きをし始めました。刺激がなければ、新しい発想は出てきません。思いがけないテーマを外から与えられて、それに対してアイデアを考えたり、それを実現化する手だてに思いを巡らせたり、チームの仲間同士で「どうしよう」と話し合いながら共同作業でまとめていったり…。
 そしてまた、作業を進めていくプロセスの中で、理想通りに物事が進まないジレンマにも遭遇したはず。そんなときに途中で諦めることなくどのような折り合いを付けて、できるだけ望みに近い状態へと持っていくか。そういったことを、今回の体験で生徒たちはしっかりと学んだと思います。これができたことは、生徒の将来に大きなプラスになると思います。
 それと、プレゼンテーションの大切さ。生徒たちがこれから乗り越えなければならない大学入試においては推薦入試のみならず、一般入試においてもプレゼンテーションの能力は重要視されているものですが、これも“場数”を踏んでいってこそ上達していくものです。これらを考えると、本当に生徒たちにとってとても刺激的で、とても収穫の多い体験だったと思います」

   
   
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