秀光中等教育学校 平成24年度卒業式 答辞【全文】
 

 放課後の通学路、少しずつ伸びゆく日の長さが冬の終わりを教えてくれるとともに、優しく暖かな朝日が春の訪れを感じさせる季節となりました。

 本日は多数のご来賓の方々のご臨席を賜り、厳粛な中にも心温まる秀光中等教育学校第10回卒業証書授与式を挙行して頂き、卒業生一同、心よりお礼申し上げます。ただいまの校長先生の励ましのご式辞、父母教師会会長様からのお祝いのお詞。在校生を代表し、鈴木聰志生徒会長からの熱いメッセージを胸に私たち12期生は卒業します。

 今日、この日を迎え、私たちもついに送られる側になりました。学年が上がるごとに近づいていくひな壇。これまで何度も歌った『自由への讃歌』、式を終えた後に肌で寒さを感じながらペデストリアンデッキで先輩方を見送ったこと。送られる側になった今、六年間のこの日の思い出がよみがえります。

 思い返せば、6年前の入学式。たくさんの方々に見守られ不安な気持ちでグローリーホールの入り口をくぐりました。あの時初めて顔を合わせた仲間とも、今では厚い信頼で結ばれ、今日の日を迎えることが出来ました。

 秀光での多彩な行事は私たちの絆をより一層強くしてくれました。3年生のユーロスクールでは初めて生で触れ合う西欧の文化に世界の広さを感じました。また建築物や町並みに圧倒と感動を覚えたことを鮮明に思い出します。

 東日本大震災で真夏に延期された京都研修。友人と語り合いながら歩く街並みはよりいっそう日本文化の優美さを感じさせてくれました。帰りのバスの中で、「皆での旅行は今回で終わりなんだね」、という友人の言葉に秀光での残された時間があとわずかであることに気づかされ、この時を終えたくないという気持ちを痛切に感じました。

 毎年行われる合唱コンクール。練習中に、教室に差し込む美しい夕日、白い息を吐きながら暗い夜道を歩けば鼻歌で奏でる合唱曲、クラスがうまくまとまらず険悪な雰囲気になったこと、全員の歌声が一つになった時の嬉しさ、全てが胸を熱くする思い出です。

 日常生活を思いおこすと、朝の時間、昼休み、皆で受ける授業。放課後の教室で大人数で楽しんでいる姿や友人と語り合う姿、真剣に勉学に励む姿、行事の準備など、どれも慣れ親しんだ大好きな風景です。卒業まであと少ししかないと友人と共にカレンダーで残りの日数を数えたこともありました。また、昨年先輩方が卒業した後の静かな教室から寂しさだけでなく、6年生という責任感を感じたことを思い出します。

 受験学年となり、友人たちの机には使い込んでボロボロになった教科書、何度も添削し真っ赤になったプリント、大切に書き込んだノート、それぞれの目標にむかって必死に努力する姿がどれだけ互いの力になったことでしょう。

 素直で正直、仲間への思いやりが強く、やるとなったらとことんやる、それが私の見てきた12期生です。誰かが苦しんでいるとき、大丈夫?と声を掛け合える、ただそっと傍にいて人を励ますことの出来る、無意識のうちに優しさで人を救うことの出来る仲間たちです。幼い部分もあり、ぶつかり合うこともしばしばありました。しかし、そのたびに強い絆で結ばれていくようでした。

 また、後期課程で担任をしていただいた小岩久美子先生、佐藤真弓先生、主任の佐藤光一先生は生意気な私たちに親のような心で無条件に愛情を注いでくださいました。遅い時間まで進路の相談に乗ってくださった先生方、講習をしてくださった先生方にもいつも力強く支えていただき感謝の想いでいっぱいです。先生方が本気で向かってきてくださったからこそ、素直に受け止められることもありました。時に通じ合えないときはもどかしい気持ちもありましたが、先生方の優しさにいつも背中を押され、次の一歩を踏み出すことが出来ました。

 そして、いつも温かく見守ってくれた家族。どんな言葉で感謝の気持ちを伝えればいいのか、この思いを形容する言葉がみつかりません。毎日、当たり前のように食べていたお弁当。朝早く起きて、準備をしてくれていた両親の姿が目に浮かびます。将来について真剣に話し合ってくれたこと。好きなことをしなさいと言いつつも、本当は誰よりも心配してくれていること。うまくいかないことがあって八つ当たりをしてしまったときに、全てを受け止めてくれたこと。学校生活とはまた違った部分でいつも私たちを支えてくれました。本当にありがとう。

 少子高齢化によって歪みが生じている社会。明らかに人口ピラミッドが逆転してしまったことで年金や介護など若者への負担が拡大しています。また、東日本大震災の復興の遅れや、きしみの目立つ国際関係など、私たちが今から踏み出そうとしているこの国の未来は、解決していかねばならぬことばかりです。しかし、そんな困難も自分たちのこの手で変えてゆかなければなりません。私には、この秀光で学んだ仲間たちが協力し合い、世界をまたにかけて活躍している姿が目に浮かびます。卒業してから一人ひとり歩む道は違っていても、秀光で得たものを力に世界の諸問題に立ち向かっていきたいと思います。

 6年前、今の自分たちを想像できなかったように、未来を知ることは出来ません。これから先、納得できないことや辛いこと、投げ出したくなることもあるでしょう。私たちはこれから今以上に様々な感情を知り大人へと成長していきます。どんなときだって、一人ではないということ、12期生といういつも温かく迎えてくれる仲間がいるということを決して忘れず、それぞれが夢の実現のために一歩一歩を踏みしめながら歩んでいく決意です。

 最後に、仙台育英学園秀光中等教育学校の一層の飛躍と皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、12期生の仲間、支えてくださった先生方、家族、在校生の皆さん、ここにいる皆様全員に、次の言葉を贈り、答辞とさせていただきます。

 ユーロスクールで私たちが歌った『あの鐘を鳴らすのはあなた』より「あなたに会えて良かった」。


平成25年3月2日
卒業生代表 星

 
 
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