秀光中等教育学校 平成23年度卒業式 答辞【全文】
 

 暖かな風の訪れとともに、力強い命の息吹が感じられるこの季節。今まさに我々秀光中等教育学校十一期生は、慣れ親しんだこの秀光という名の巣を離れ、輝ける大空へと羽ばたこうとしております。

 本日はたくさんのご来賓の方々の臨席を賜り、我々卒業生のために、このような厳粛かつ盛大な場を容易してくださり、誠にありがとうございます。今、皆さんの支えの下で無事に卒業を迎えられる幸せを、改めて噛みしめています。校長先生の励ましの式辞、父母教師会会長様のお祝いのお言葉、在校生の皆さんの祝福の合唱に加え、生徒会長である星さんの心のこもった送辞をいただき、我々卒業生は来る未来に向け背中を押される思いです。

 あと数日で、東日本大震災から一年が経とうとしています。あの震災で数多くの方々の尊い命が失われました。そして秀光生の私たちも、大切な先輩を亡くしました。震災で亡くなられた方々に今一度哀悼の意を表します。震災後もこの場にいるひとりひとりに多くの悲しみや苦労があったことでしょう。それらを背負って、私たちは懸命に、一歩、また一歩と、今日まで歩みを進めてきたのです。危機に瀕した日本をたて直そうと、震災の直後から、日本各地の人々が各々の分野で“復興”を合い言葉に力を合わせ奮闘してきました。復興と復旧は違います。もとあった豊かさを取り戻し、さらに良いものへとつくりかえるのが復興です。この一年は、この時期に学校生活最後のときを過ごした私たち卒業生にとって、己と真摯に向き合い、これからの生き方を考える大切な時間でもありました。より一層の使命感に駆られ自分の道を進むと決めた者や、自分の生き方を一から考え直し進路を大きく変更した者もいます。

 このように震災は、我々に腰を据えて将来を考えるきっかけとなりました。しかし、なにより我々の成長の根幹にあるのは、この秀光で過ごした六年という日々の蓄積です。卒業を迎えるにあたり、今日までの歩みを振り返ると、それは多くの方々の支えがあって今の私たちがあるのだと気づかされます。今から六年前、私たちは馴れないぶかぶかの制服に不安と期待を包み、満開の桜とともに秀光の門をくぐりました。それからの長い時間の中、我々の成長の機会は、学校行事はもちろんのこと、日々の生活の至るところに溢れていました。友人との関わり、部活動を通した関わり、先輩後輩との関わりと、そのどれもが刺激的で、学びに満ちたものでした。六年の月日が流れ、その間に私たちは身体をたくましく成長させ、心もそれに増して一回りも二回りも成長させて、今こうしてこの場に立っています。

 我々十一期生が六年間で築き上げてきた関係は、うまく形容する言葉が見当たりません。私たちの中にはどんな困難も物ともせずに立ち向かう確固たる結束があり、互いが互いを心から信頼しています。こんなにも心から解り合える関係は、家族以外では他に考えられないほどです。こうした深い関わりができるのも、秀光の環境があってこそのことでしょう。六年間のうちには、衝突することもあれば、ときに激論を交わすこともありましたが、そのひとつひとつにドラマがあり、次々と新たな絆が生まれていきました。この秀光という学舎で、至誠・質実剛健・自治進取の建学の精神のもとに高めあった日々が、今の我々をつくりあげたと言えます。まだ幼かった六年前、秀光への入学を選んで良かったと、改めて感じます。仲間のことを誇りに思うとともに、そんな仲間たちと、秀光の卒業生として社会に出て、世の為人の為に貢献すべく努力できることを大変嬉しく思います。我々の卒業の後は、たくましい後輩たちが伝統を引き継いでくれることでしょう。秀光には、六年間という長い時間を、縁ある仲間や先生方と共に過ごせるという他にはない環境があり、それを実りあるものにするチャンスはどの生徒にも平等に与えられています。濃密な時の中でじっくりと己を成長させることができるのは、秀光ならではの醍醐味です。そんな恵まれた環境にいるからこそ、後輩達には、ぜひ失敗を恐れずに、仲間とともにどんなことにも果敢に挑戦して欲しいと思います。そして君たち自身の手で、秀光をさらに素晴らしい学校へと作り上げていってください。

 今、国際社会は大きな転機を迎えています。台湾の総統選挙を皮切りに、ロシアやアメリカといった先進諸国で相次いで大統領選挙が行われ、世界の指導者たちに大きな変革とその具体的なビジョンの提示が求められていると言えます。この変革の流れが今後十年の国際情勢を決定づける重要なものであることは間違いありません。震災復興の機運が高まる今、日本も自らの立場を海外に示し、主体的に行動していかねばならないでしょう。私たちの世代が新時代の先陣を切る、その意気込みで、まだまだ未熟ではありますが、誠心誠意努力して参ります。

 六年間お世話頂いた先生方、我々生とのための情熱溢れる指導に、心より感謝します。先生方は私たちに自分の時間の全てを捧げ、教え導いてくださいました。私たちと真摯に向き合い、真剣に将来を一緒に考えてくださる先生方の存在はいつも私たちの力強い存在でした。そんな愛に溢れた先生方は私たちの師であるとともに、父親や母親のようでもあり、また心から信頼できる友人のようでもありました。先生方に学んだことは、我々一人ひとりの身に染み渡っています。これからはその教えに恥じぬよう努力を続けるとともに、そしていつの日か、先生方と対等の社会人として成長し、胸を張って再びお会いできるよう、日々は励んで参ります。

 そして、今日までの十八年間、片時も私たちの傍を離れずに力の限り支えてくれた家族にこの場を借りて感謝します。お父さん、お母さん、兄弟、おじいちゃん、おばあちゃん、いつも無償の愛をありがとうございます。秀光に通わせ、豊富な学びの機会をくださったことにも、心より感謝します。手を引かれ歩いていたあの頃の私たちも、家族の支えがあって、今こうして卒業を迎えることができます。これからは私たちが家族を支える番です。社会の一員となり、世の為、そして人の為に貢献すべく精進して参ります。

 最後になりましたが、我々の誇る母校秀光中等教育学校の益々のご発展と、校長先生、お世話になった先生方、そして在校生の皆さまのご健勝とご多幸を祈念し、卒業生代表の答辞とさせていただきます。

 皆さま、今日まで本当にありがとうございました。


平成24年3月2日
卒業生代表

 
 
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