*答辞 *第7回卒業証書授与式
 
 

 日ごとに日脚が延び、木々に新しい芽吹きを感じる季節となりました。本日は多数のご来賓の方々のご臨席を賜り、厳粛な中にも心温まる秀光中等教育学校第7回卒業証書授与式を挙行していただき、卒業生一同心より御礼申し上げます。只今の校長先生のお励ましのご式辞、父母教師会長様のお祝いのお詞、在校生の皆さんの力強い祝福の合唱を胸に、私達第9期生60名は大海原に船出しようとしております。

 先日、1年入学時のニューライフプランの感想文を読み返してみたところ、未知の世界へ踏み出すことへの期待と不安がそれぞれの幼い字で綴られておりました。思い起こしてみると校長先生の、「只今呼名されました64人の皆さんに対して、秀光中等教育学校への入学を許可いたします」、というお言葉から始まった私たちの学校生活でした。あのとき私は校長先生に「これからの学校生活を一日一日大切にして6年後の春、それぞれが6年間の自分の目標を達成し、笑顔で卒業できるよう日々精進したいと思います。」とお誓いしました。「光陰矢の如し」という言葉通り、あれからもう6年が経ったのかと思うと、月日が経つのは早いものであるとしみじみと感じております。目を閉じてみると数えきれないほどの仲間たちの笑顔や涙が脳裏に浮かびます。

 とても充実していて濃密だった6年間でしたが、そのなかでもユーロスクールは私達の人生の大きな財産になりました。この学校のLanguage and Musicの教育方針のもと、モーツァルト生誕250周年の年、私達は西洋の文化を見て、聞いて、感じて帰ってくることができました。ツェルマット教会でのチャリティーコンサートでは、声が枯れそうになるまで練習して本番に臨みました。いつの間にか、ツェルマットの町を歩きながらも曲が口をついて出てくるようになり、皆全部の曲を暗譜してしまいました。全曲暗譜でのコンサートを行ったのは私達が初めてだったと後で伺いました。最後のHallelujahを歌いきった瞬間、お客様のスタンディング・オーベーションに皆感動して、涙が出そうになったことを今でも鮮明に思い出します。

 京都研修では、ユーロスクールで体験してきた西洋の文化と日本の伝統文化を並べてみることで、日本の良いところを沢山見つけました。しかし、他方、心の中では「この研修がみんなと一緒に出かける最後の行事なんだなぁ」という思いが募り、一抹の寂しさをも覚えました。

 各クラス渾身の合唱コンクールでは、ただ歌う技術の向上だけではなく、意見の対立や気持ちをまとめ上げるということの難しさを学びました。それと同時に皆が目標に向かって気持ちを一つにするということがどんなに素晴らしいことなのか、どんなに大切なことなのかにも気付くことができました。

 ところで、2009年を漢字一字で表すと「新」だそうで、いろいろな場面で「新しく」「移り変わる」変革の年でした。政権は自民党から民主党へと移り、アメリカでは黒人初の大統領となるオバマ氏が1月に就任しました。また、新型インフルエンザが世界的に流行し、各国で沢山の感染者が出ました。今年1月に起こったハイチでの大地震の際は普段対立しているアメリカからも軍隊が派遣され、救援のために力を尽くしていた姿は記憶に新しいところです。このように目まぐるしく移り変わる世の中で、私達は協力して乗り越えていかなければならないことがたくさんあると思います。日本の中だけではなく、世界を見て、いろいろな国と手をつなぐことが必要です。それは私達の世代が成し遂げなければならないことです。今後私達の進む道は一人一人違っていても秀光での活動においてglobalize
することができた知識と能力を生かし、世界の諸問題に立ち向かっていきたいと思います。

 私たちを教え導いてくださった校長先生をはじめとする諸先生、私たちが快適な学校生活を送ることができるよう支えてくださった職員の皆様、私達を常に応援してくれた在校生の皆さん、今一度厚く御礼申し上げます。そして、何よりこの18年間、どんな時も私たちを優しく見守り、最大の理解者であり続けてくれた、掛け替えのない家族にこの場をお借りして「ありがとう」の言葉を捧げたいと思います。

 私達の秀光生活の傍らには音楽がありました。音楽は一瞬の間に生まれては消えていく沢山の音たちが私達を魅了させてくれます。人と人との出会いや別れも音楽に通じるところがあると思います。今日私達はこの学び舎を巣立ちます。もう同じメンバー全員で音楽を作ることは出来ないでしょう。卒業するということは必然的に、苦しみや悲しみを共有し、喜びを分かち合い、今まで6年間ともに学んできた仲間との別れを意味します。それは私達にとって寂しいことですが、これまで共に作ってきた絆は切れることなく続いていくのだと確信しております。秀光の仲間達と作った音楽を忘れずに、今度は新しく出会う人達との音楽を大切にこれからの人生の一瞬一瞬をひたむきに生きたいと思います。

 最後になりましたが、秀光中等教育学校の益々のご発展と、校長先生をはじめ、諸先生、そして在校生の皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、最高学年という重みのあるバトンを5年生に渡したいと思います。

 6年間ありがとうございました。


平成22年2月27日 
第7回 秀光中等教育学校
第9期生卒業生代表  阿部


 
   
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